思慮の上に立つ


生きているだけでコンプレックスを刺激されるような人間がお笑いを見に行くなよと自分でも思うが、好きになってしまったものは仕方がなかった。幸いわたしの応援している芸人さんにはそういったみじめな思いにさせられるようなことがかぎりなく少なくて、それは日常ではなく非日常というか、自分たちが生きている世界でなくべつの世界の出来事のようなネタをしてくれるからなのがおおきくて、わたしは運がよかったなあとずっと思っていた。

おひとりでの配信のなかで、自分たちの漫才はいつから変わっていったのか、自分ではなく相方の演じかたの変化というお話しをされていたときがあって、その延長線上で「(相方は)太ってるっていじられるのがほんとにいやなのよ、コンプレックスだから」という言葉が出たときハッとなった。だからデブ使った漫才してないでしょ、というのにも、そのことを否定するわけではなく、芸人をやっていると感覚がおかしくなるけど惑わされてない、それがまとも、と評していたのにも。

お笑いを見ているときだけではなく、生きているだけでコンプレックスを刺激されるのがが普通の状態だなと思うし、気にしないでいられるときはおそらく普通ではない状況なんだろう。おもしろいなと思える芸人さんを見つけられて、好きになれたことに関しては運かもしれないけど、好きになった芸人さんがただただおもしろいとだけ思えるネタをやってくれることは全く運とかではなくて、その下にはたくさんのものが敷かれている。わたしもなかなか年をとってしまったけど、気づいてたようで気づいてなかったことってまだまだたくさんあるなとすごく思う。見えている配慮よりも見えない思慮に救われているなと、そう感じることが昨年からとても増えた。いじられるっていうのはノンカロリーでイージーモード、という言葉のあとに、お笑い芸人の世界ではですよ、あくまで、と付け足していた平衡感覚を信頼している。

(2021年1月の印象的だったことの話でした)

OS1ゼリー

ぐりという名前です。アイドルオタクの気持ちブログ。

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