照明の光の色を覚えていられるライブが好きだ。スピッツの武道館ライブを見た日からわたしはライブにおける照明に恋をして、二丁目さんを好きになってライブにたくさん足を運ぶようになってからもこの日のこの曲はこんなふうな照明だった、ってアイドル本人の姿よりも光景のことをたくさん思い出す日もあった。ステージの照明に照らされるアイドルが世界でいちばんきれいだと思うし、いつからかステージに立って照明に照らされるアイドル、っていう光景そのものがわたしにとっての神さまなんだって結論に達した。アイドル本人その人ではなく。西川口Heartsの照明はいつもどこか劇場を思わせるような照明と思っていてそれがすごく好き。
この日のノスタルジスターは全編をとおしてきいろいノスタルジスターで、客席までずっと照らされていてあかるかったのがノスタルジスターにしてはめずらしいな、と思っていたら、つぎのHe isで一気に暗闇になってぺいさんと紅さんがコントラストの強い赤色と青色に照らされていて、それがゾッとするくらいきれいだった。ふたりの影にまで色がついていたからその全体像込みで覚えておかなければと思って身を引きながら舞台の上を見ていた。不自然だと感じてしまうくらいにあかるかった違和が線になって繋がるような照明だったのが大好きだった。ミキさんのソロパートになると、暗闇が一気に「舞台のスポットライト」といった様相の色のないつよい光に照らされていたように覚えていて、わたしのなかのHe isはたしかにこの色だな、と思った。三人が床に這って見えない壁を叩くシーン、上手側に入ってしまいがちなわたしはここぺいさんしかきちんと見られたことがないんだけど、それでもいいかもしれないと思ってしまうくらいにここのぺいさんは凄まじくて、一度顔を伏せてから顔をバッと上げるときに長い髪が絡みついて顔が見えなくなって、その瞬間とこのときの照明の色がそれしかないって一瞬だった。ここのぺいさんを下から見上げたい気持ちはすごくわかるなと、となりのぺいさん推しが咄嗟にしゃがんで下から覗きこんでいたのを感じながら思っていた。ウサギと賽子さんでは紫の光の色がすごく印象的で、アウトロで四人が役目の終わった人形みたいになる(ようにわたしは見えている)ところ、こちらから見ると舞台の上の人は逆光で影になっていて、そのうしろから照らされてるであろう光によって輪郭だけが紫にふちどられていて、紅さんのはねた髪が一本一本光に染まっているのを見ながら、あーわたしのなかの賽子さんの景色ってたしかにこのかんじだ、ってなんだか懐かしくもなった。MCを挟んでからのブチ上げセトリのパートでは全編をとおして「イメージするようなライブハウスで見るバンドのライブ」の照明というのかな、ずっとつよい逆光で四人の顔が見えないくらいで、それが新鮮で好きだった。わたしはわたしのアイドルが逆光で顔が見えなくなるたびに信仰心が高まってしまうし、影になっていてもその向こうで笑ってくれているのが見えるともう大好きで大好きでたまらなくなってしまう。ひさびさに照明のかんじまで覚えていられるライブで、そのことがすごくうれしかった。
泣いた、とか泣いちゃったとか言っててもわたしがこの人たちのライブで涙をながして泣くというのはわりと少ないんだけど(泣いたから良いわけではないし、泣かなかったから良くなかったわけではけしてない)、この日のHe isでミキさんとぺいさんがお互いを見やるまなざしがあまりにもやさしく感じられすぎてさすがに涙が出てしまった。「彼は僕だ」を思わずいっしょに呟いてしまうようなそんな日だった。人間の表情ってその人が表情筋がその人の表情筋であるかぎりそこまでおおきく変わりはないのかな、おなじようなものなのかなと思うけどなんでおなじ曲のおなじ箇所でこんなに毎回ちがうふうに感じるんだろうな。その人の気持ちが乗っているからとかそういうことなんだとは思うけど、気持ちひとつでこんな劇的にちがって見えるものなんだろうか。何回も何回もステージを見ていてもわからないことだらけだ。
そんな日のこの次の曲のBUG IS LIFEのことだった。ラストの「汚れ汚し~」の部分はまんなかでミキさんとぺいさんが向かい合って歌い筆さんと紅さんが狛犬みたいに上手と下手に分かれて拳を掲げているシーンで、ミキさんとぺいさんはいつもどおり向かいあってはいたけれど、この日はミキさんがぺいさんにむかってひざまづいてぺいさんを見上げながら歌っていた。(わたしは紅さん推しなので)ここのシーンをきちんと見られることはほぼないんだけど、この日はさすがにえっ!?となって何度も視線を行き来させて最終的にはミキぺいを見てしまった。衝撃をうけたのはやはり「ミキさんがひざまづいていること」が中心ではあるんだけど、いちばん脳みそが覚えている感覚は「ぺいさんはこういうとき微笑むんだな」ということ。この感覚にたいする正しい表現か自分でもよくわからないんだけど、ものすごく背徳的に感じて、見てはいけないものを見ているような気持ちになった。ミキさんはこのグループにおける絶対的な存在で、プロデューサーで神さまで姫であって、そういうひとがひざまづいている光景をこちらがはたして見てもいいんだろうか、と心臓がバクバクしたし、たとえばこれが相手が筆さんや紅さんだったらそういう振りなんだな、って納得できるんだけど、相手がぺいさんだったから振りを飛び越えたほんとうになってしまっているような、そういう感覚だった。どういった意図だったのかってこちらにははかりかねるんだけど、わたしはこの日いつもあまり意識をしていなかったこの箇所の詞が鮮明にきこえてきて、「汚れ汚し」かつ「白と黒」を視覚的にわかりやすく落とし込んだシーンだったのかな、とも思う。すごいものを見せてもらいました、ありがとうございました。
シリアスな前半からMCを挟んでからの後半はガラリと一転して、超ブチ上げ大暴れなかんじだった。メンバーもいつも以上に前に前に出て柵にも足をかけて身を乗り出して、目の前にきたぺいさんを指さしているときに一瞬コロナ前の激狭ライブハウスの対バンにもどってきたんじゃないかと錯覚してしまうような、そんな感覚に陥った。きっとこの日は前に前に出よう、と四人で事前に話し合ったりしてたんじゃないかな、となんとなく思うけど、たぶんその予測というか想定の範囲内を自分たちでもびっくりするくらい超えて前に前に出てたんじゃないかと、そういうふうに見えたライブですごくよかった、超たのしかった。
ミキさんがいつも以上にたのしそうに見えてガンガンにノッてて、「ミキさんが良いライブがいちばん良い」論者としては最高のライブ!あといつも以上に目を合わせてにこにこしてくれてたように感じられて、ミキ、俺のことが好きなのか・・・?の気持ちになれてかなりよかったです。ミキさんってかわいい。MCのなかでぺいさんがあたらしいうたいかたに挑戦していた、やさしくうたっていた、ってお話しが出ていて、後に後に残すように一文字ずつ大切にうたうぺいさんの歌唱はほんとうに挑戦、というかんじですごくよかったし、あたらしい挑戦の日だったと思うんだけどわたしはなんだか昔(というほど昔でもないんだけど)のぺいさんの歌だという気持ちにもなっていて、ノスタルジスターでひさびさに無意識のうちに前世記憶よみがえりからのケチャキャンセルをやってしまった。そういう気持ちになるようなライブだったんだな、なんとなく。ぺいさんはずっとやさしい。あとわたしはとなりの人(知り合いだと特に)の推しをけっこう注目して見てしまいがちで、いまきれいだなあって思ってるのかな、とか想像しながら見てしまう。ノスタルジスターのとき、おおきく広げたアイシャドウのラメがすごくきらきらしていてきれいだった。新体制になってから四人それぞれが人間として変わっていっているのを間近で見ているような感覚だけど、この日筆さんが後半の盛り上がりセトリでだれよりも前に前に出ようとしているように感じられて、筆さんが柵に足をかけた瞬間、たぶん感動する場面じゃないけどジーンとしてしまった。みんなこうやってかっこいいアイドルになってくんだな。紅さんのことをさいしょからさいごまできれいだ、と思いながらずっと見つめてしまった。ぴんと張りつめて息がしづらいような前半も、髪を振り乱す後半もずっときれいなひとで、きれいなものが好きでたまらない生き物として生まれてきてよかったなと思った。きれいなひとなのにノスタルジスターで泣きそうに見えた姿はこどもみたいでいとおしかったし、He isで三人がミキさんのまわりで膝をついてミキさんを見上げているシーン、ここの紅さんをわたしはとくべつにうつくしく思うんだなとこの日気づくことができてそのことがうれしかった。とくべつだ、と思える一瞬がたくさん折り重なって思い入れになっていくから。背筋を伸ばして腕をまっすぐに伸ばす姿もミキさんへの視線も、ここはすべてが直線としてきれいだ。何度か使っている表現だけど、ここは神託をうけるひとのたたずまいだなと思う。紅さんはこちらがウオー!!となっているとにこにこってうれしそうにしてくれる(ように思える)のがうれしいし、最近はだんだんにこにこからニヤーッてかんじで笑ってくれるようになって(いるように思える)それがめちゃくちゃうれしくてたのしい、いっしょに闘っている!ってかんじが超ある!めちゃくちゃ大好きになっちまう(突然の告白)。三原色カタルシスの「この風景だけは愛と呼ばせて」がもともとこの人たちのライブでいちばんと言っても過言じゃないくらいの好きな瞬間というのもあるけど、それを抜きにしてもこの瞬間の紅さんの歌唱の引力よ、と思う。ああアイドルが好きでよかった、って思えるような歌唱ってなんてすばらしいんだろうか。
10曲は終わってからのMCで、今日から最後の曲は今日ここにいるひとたちだけに向けて今ここで選ぶことにした、ということを教えてくれた。もともと二部制でおなじセトリのこのライブだけど、毎回毎回人が違えば景色も違って感じることも違う、ってお話ししてくれていたと思う。わたしはもともと、たとえセトリがおなじだとしても状況が違えばそれは全然別物のライブだから、と考えていたし、だから二部制でどちらかしか行けないことによって必ず見ることのできないライブが発生することも悔しかった。なので、一曲毎回ちがう曲をやる、となってもわたし個人としてはそこまで変わらないんだけど、ミキさんがすごくすごく悩んで、でもどうしても届けたくて、という気持ちで決めたのが痛いくらいわかったのでべつに全然気にしなくていいようれしー!とか軽々しく言えないんだけど、そのときの自分たちだけにこの曲を、ってステージを見せてくれるのはとてもうれしくて特別なことだな、と思います。この日の一部の人たちは熱いひとたちで、たとえ空が見えなくても空が見えるようなパフォーマンスを、とリバを披露してくれた。前日のNATSUZOME2021で、空が広がるステージだからこれを選んだ、とトリにもってきた曲をこの日もトリにもってくるのはめちゃくちゃ意味だな、と思ってうれしかった。この日もいちばんかっこいいわたしのアイドルたちありがとうございました!
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